最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「体調、大丈夫ですか?」

「あ、はい。たいしたことはありません、少し疲れただけで」

「毎日、ずっと忙しなく観光してましたから、疲労がたまったんでしょう。少し休むといいですよ」

「はい、明日のこともありますし、今日は家でのんびりすることにします」

すると、ダリルは珍しく不服そうに顔をしかめた。

「シオンはあなたをアルフォード伯爵家のパーティーへ連れていくつもりだそうですね」

私が「はい」と答えると、彼は大げさに顔を覆う。

「どうしてそんな大切な場に、あなたを……」

まるで腹いせのように、私に聞こえる声で大きくため息をついた。

「大切な場――ですか」

「日本人のあなたにはわからないと思いますが、伯爵家に招かれるというのはとても名誉あることなんです」

刺々しいダリルの言葉に私はごくりと息をのむ。彼が怒りをあらわにするなんてよほどのことだ。

「しかも、エレノア様の生誕パーティーだっていうのに」

「エレノア様……?」

「シオンの婚約者ですよ」

驚いて「え……」と声を漏らす。

以前にもダリルはそう言っていたが、仮にそれが事実だとすると、さっきの求婚めいた言葉はなんだったの? さっぱりわからない。

< 130 / 272 >

この作品をシェア

pagetop