最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
賓客は食事を終えたあと、サロンに移動して夜更けまで語らうのが習わしらしい。しかし、私たちは早々にアーサーの家を出た。

ダリルとも別れ、私と志遠さんは自宅に帰ってきたのだけれど――。

「陽芽。なぜ俺の目を見てくれない」

私は相変わらず整理できないもやもやを抱えたままで、志遠さんに向き合えずにいる。

「……なんでもありません」

「そんなわけがないだろう、いつもの陽芽じゃない」

「ちょっと疲れているだけです。着物を脱ぎますから向こうにいてください」

そう言って私は客間のドアを閉めた。帯を解きながら、ふうっと深い息を吐きだす。

志遠さんとエレノアさんは、あのとき、おそらく――。

同意の上だったのか、そうでなかったのかは別として、志遠さんが彼女とそういうことをしていたのだと思うと、すごく胸が苦しくなる。

……聞きたいけれど、とても聞けない。

認められてしまったらショックだし、違うと言われても疑ってしまう。どう転んでもいい結果にはならない。

……そもそも、どうして私がショックを受けるの?

志遠さんからパートナーになってほしいと言われたけれど、鵜呑みにしていたわけじゃない。ずっと半信半疑だった。

彼は立派な肩書きを持った経営者であり騎士。私なんかを相手にするより、エレノアさんと一緒にいる方がいいに決まっている。

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