最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
そう答えて唇にそっと誓いのキスを落とす。腰を抱き寄せられ、ふたりして倒れ込むようにベッドへ身をうずめた。

「志遠さん……時間が……」

「あと五分ある」

「五分じゃなにも――」

「陽芽を気持ちよくすることならできる」

そう答えて、性急な手つきで私の衣服に指先を忍び込ませる。

「待って、志遠さん! 仏壇!」

志遠さんの手がぴたりと止まる。私たちは揃って仏壇に顔を向け、こちらを笑顔で見つめる両親――の遺影へと視線を移した。

「お父さんとお母さんが見てる……。仏壇、閉めさせてください」

志遠さんが私から手を放す。起き上がりそそくさと仏壇の扉を閉め、すぐさまベッドに戻ってきた。

「おかえり」

そう言って志遠さんは柔らかな笑みと、深い口づけをくれる。

「志遠さ――」

瞬きの間に快楽の沼に突き落とされ、体の自由を奪われた。

五分――正確には十五分程度だったとは思うが、あっという間に時間が過ぎ去ってしまった。

衣服を乱されたまま茫然とベッドに横たわる私、一方彼はネクタイをきゅっと締め直し、身だしなみを整える。

「陽芽。すぐに日本に来るから、俺を信じて待っていてくれ」

「ええ……わかりました」

身を起こす私に、彼はひとつキスを落として玄関へ向かう。

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