最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
私はラックの中央にある小型の仏壇を開けると、ショルダーバッグの中に入れていた遺影をもとの位置、父の写真の隣に置いた。

志遠さんはひくりと頬を引きつらせる。

「いや、そこに仏壇はあり得ないだろ。上に物を載せるとか、罰あたりな」

「仕方がないじゃありませんか。この広さのワンルームで仏壇を置くスペースなんて作れないんですよ」

両親は他界し実家もないから、荷物を預けておく場所もない。

一応小さなトランクルームを借りて両親の遺品を詰め込んでいるが、そこももう手狭だ。

「……一緒に広い家に住もう。俺が手配しておく」

仏壇に手を合わせながらつぶやく志遠さんを、私は驚いた顔で見つめる。

本当に彼は、この日本で私と結婚するつもりなのだろうか。

「あの、志遠さん。本当に、本当に……」

「結婚のことか? 今さら聞くな。本気に決まっているだろ」

強い口調で答えて私の方へ歩み寄ると、両頬を手で包み込んでこつんと額をあてた。

「その疑い深さを、どうして詐欺に遭ったときに発揮できなかったんだろうな」

「だって、こっちの方が信じられないんですもん」

「いい加減に信じろ。これでも俺は騎士の称号を授かった人間だ。嘘などつくものか」

< 174 / 272 >

この作品をシェア

pagetop