最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『あとで物件の情報を送る。なにか気になることがあれば言ってくれ』

「気になること、といえば――」

『なんだ?』

尋ねられたが、今この場で言うことでもないと口をつぐむ。

「なんでもありません。また今度、ご報告しますね」

『? ああ。待っている』

そんなやり取りを交わして通話を終わらせた。

気になること――志遠さんには相談できなかった懸念をぼんやりと思い起こす。

……彼と体を重ねて以降、一度も生理が来ていない。

おかしいなと思い始めたのは先月だった。これまでも予定日がずれることはあったけれど、一カ月以上大幅に遅れたことはなかった。

まさかまさかと思いながら、気がつけばもう二カ月が経っている。そろそろきちんと婦人科へいかなければ。

結局、重い腰を上げたのはそれから二週間後の土曜日。

もう十二月も後半に差しかかり、この機を逃したら病院はお正月休みに入ってしまうというタイミングで、ようやく婦人科を受診した。

ちまたはクリスマス一色。婦人科のロビーにもクリスマスツリーが立っている。

志遠さんは年末で忙しいのか、最近連絡が来ない。

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