最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「志遠さんが心配してくれるなら、私が悩む意味はないじゃありませんか」

ふたりで難しい顔をしていても仕方がない。私が笑顔でいることを、彼もきっと望んでくれていると思うから。

「陽芽。俺はそんな君が好きだ。……愛してる」

体で愛情を交わせない分、私たちはいつまでも抱きしめ合う。

こうやってお互いの体温を確かめ合っていれば、より深く愛情を伝えられる気がした。



ふたりで階段を下りると、紅茶の上品な香りが漂ってきた。

「あら。わざわざすみません。今、お茶とお菓子を持っていこうとしていたんですよ」

キッチンで頼子さんがお茶の準備をしてくれている。

ダイニングテーブルにはガラスのプレートが置かれ、焼き菓子がたくさん並んでいた。

「陽芽。椅子とソファ、どちらが楽なんだ?」

「食べるなら椅子の方が」

「ならここで。頼子さんも一緒に食べよう。お茶を三つ淹れてくれ」

志遠さんが誘うと、頼子さんは「私までありがとうございます」と目を細めた。ティーカップ三つにデカフェの紅茶を淹れて持ってきてくれる。

「頼子さんは、俺が生まれる前から御子神家に仕えている」

「では、志遠さんが赤ちゃんだった頃からお世話を?」

「ええ、ええ。子どもの頃はかわいくて賢くいらっしゃって。まだ年端もいかないうちにおひとりでイギリスに渡られて、おつらかったでしょうに、立派になられて……」

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