最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『体は大丈夫ですか? あまり経過がよくないと聞きましたが……』

「ご心配ありがとうございます。そこまで深刻ではありませんが、一応大事をとって休んでいるんです」

『そうですか。それを聞けて安心しました』

ダリルはホッと息をつくと、あらためて切り出した。

『実はヒメに折り入って頼みがあるんです。シオンをロンドンに戻していただけないでしょうか』

「志遠さんを、ロンドンに……」

彼は調整をつけて日本で仕事をしているわけではないのだろうか。

私が漠然と尋ね返すとダリルは『ロンドンの経済が破綻しかけていることはご存じですね』と前置きして切り出した。

『今、こちらはぎりぎりの状況です。社員たちは不安を抱えている。シオンが顔を見せてひと言発してくれるだけで、みなの意識が変わるんです。彼のカリスマ性が必要だ』

私はごくりと息をのむ。志遠さんがロンドンに帰るきっかけとなった大手投資銀行の倒産は、今や『ジェシカショック』という名がついて、イギリス国内にとどまらず世界的な金融不安をもたらしている。

私が志遠さんを引きとめることで、不安を感じている人たちがいるの……?

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