最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
『社長という仕事をこなすだけなら、日本から指示をくれるだけでいい。けれど、今俺たちがシオンに求めているのはその先です。みなの心の礎となってもらいたい。それが結果的に、今後の彼の経営にもよい影響を与えるでしょう』

指示だけならここからでもできる。でも、現場に本人がいるといないとでは大違いだ。

彼がロンドンにいる間、私が心細く思っていたように、向こうにいる人たちも今、心の拠り所を失っているのかもしれない。

「……わかりました、志遠さんに相談して――」

『それではダメなんです』

言葉を制され、私は携帯端末を握りしめる。

『相談では、きっとシオンはあなたのそばにいることを選んでしまう。あなたの口からはっきりと「そばにいてくれなくていい」と言ってほしい。シオンがいなくても子どもは生まれる。そうでしょう?』

理論としてはダリルの言う通りで、生活的なサポートだけなら頼子さんがしてくれる。志遠さんがここに留まらなければならない理由はない。

でも、私は――。

そばにいてほしい、その言葉をごくんとのみこんで、私は答える。

「……わかりました」

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