最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
ここ数カ月、なんとか騒動を収めることと日本に戻ることしか頭になかった俺は、胸をなでおろした。

そんなとき、執務室のドアがノックされ、よく知る人物が秘書に伴われ入ってきた。

「……ダリルか」

彼は俺の個人秘書であり、御子神グループの人間ではない。

社内をふらふらと歩けるような立場にはないが、彼の胸から下げられている特権パスは、俺の指示下であれば御子神グループのどんな役職者よりも強い権限を発揮できる特殊なもの。

と言っても、俺が直接指示を下せないような特殊な状況下でのみ発動されるものであり、なんでもかんでもできるというものではない。

つまり、彼ひとりでこの部屋に来る権限はないが、俺の秘書に指示しこの部屋まで連れてこさせる権限は持ち合わせているわけだ。

実にややこしく中途半端である。作った俺が言うのもなんだが。

「こんばんは、シオン」

ダリルが人好きのする表情でにっこりと笑いかけてくる。……俺にはよからぬことを企む不敵な顔にしか見えないが。

「何度も言うが。いい加減実家に戻れ。お前は俺の部下で終わる人間じゃないだろう」

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