最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんのお父様は心臓が悪く、イギリスの有名な循環器系の専門病院に通い治療されているそうだ。

私たちのもとに会いに来ようと手を尽くしてくれたのだが、結局ドクターストップを受け、飛行機の搭乗をあきらめた。

「歓迎してもらえるかしら……」

「もちろんだ。怒っているというのは、ダリルの嘘だよ。父は君のことも晴のことも喜んでくれている」

緊張や不安、心配ごとがたくさんあって、恐怖を感じる暇もないままイギリスに到着した。

フライト中、晴は多少泣いたりぐずったりしたものの、なんとか到着までがんばってくれた。

「えらかったね、晴」

私は晴を抱いて頭をいいこいいこする。

「陽芽もな」

今度は私の方が志遠さんになでなでされ、うれしいような恥ずかしいようなむずがゆい気持ちになった。

空港に到着したのは昼過ぎ。六月のロンドンは日本より湿度が低く快適だ。

志遠さんはシャツにスラックス、私は長袖のワンピース、晴もちょっぴりおしゃれして、お出かけ用のカーディガンを羽織っている。

ロンドンから一時間程度車を走らせた郊外に、志遠さんのお父様の住む豪邸があった。

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