最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
はちみつ色の石壁でできたお城のような建物で、お庭にはバラが咲き誇っている。

どこかのどかで歴史的で、まるで物語の中に出てくるような素敵なお家だ。

かつて貴族のマナーハウスだった場所を志遠さんのお父様が買い取って住んでいるそうだ。

大きな玄関の前に車を停めると、すぐに使用人が中へ案内してくれた。

中は外観と同じく中世を思わせるようなロマンティックな内装だが、どこもぴかぴかに磨かれている。

ほどなくして、志遠さんのお父様がやってきて笑顔で出迎えてくれた。

「よくきてくださいました。ああ……息子の妻と孫に会えるなんて、夢のようだ」

お父様は何度か心臓の手術を経験し、生死の境をさ迷ったこともあるのだとか。

孫の顔が見られるまで生きられたことを喜んでいるのだと、志遠さんから聞かされていた。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。お会いできて、とてもうれしいです」

私がお父様に挨拶すると、朗らかに笑って答えてくれた。

「私の方こそ。わざわざ遠くまで呼び立てて申し訳なかった。観光だと思ってゆっくりしていってください」

たくさんある客間のうちのひとつに私たちを案内してくれる。

志遠さんは「体調は大丈夫なのか?」とお父様に尋ねた。

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