最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「心配をかけてすまなかった」

「こればかりはご縁だ。お前の祖父は良家の令嬢と結婚させたかったようだがな。私と母さんは、志遠にぴったりな素敵な女性が現れることを祈っていた」

お父様がゆっくりと私の隣のソファに移動してきた。

手を貸そうと立ち上がると、差し出した私の手を取って、深く頭をたれた。

「私はそう長く生きられないでしょう。どうか、私が逝ったあとも、志遠をよろしくお願いします」

「お父様……」

切ない物言いに、私は言葉を失ってしまう。志遠さんも複雑な表情で父親を見守った。

「やめてくれよ、父さん」

「だが、言えるうちに言っておかなければ」

この先、なにがあるかは誰にもわからない……。サロンにしんみりとした空気が流れる。

「……私こそ、志遠さんに感謝しているんです」

私は震えるお父様の手をきゅっと握りしめ、思いの丈を打ち明けた。

「どうかずっと元気でいて、私たちを――晴の成長を見守ってやってください。晴の大切なおじいちゃんなのですから」

私の両親も志遠さんのお母様も他界してしまったから、晴が『おじいちゃん』と呼んで甘えられるのは彼だけだ。

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