最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
晴が物心ついたときに、『おじいちゃんのところに遊びに行こう』と言って喜ばせたい。

お父様は声を詰まらせ、私の腕を強く上下に振った。

「……ありがとう。息子やあなた、そしてこの子が私の生きる希望になりました」

じんと目頭が熱くなる。

子どもを産むことで、様々な人に祝福してもらえた。志遠さんのお祖父様やご親戚はもちろん、会社の人々や頼子さん、友人たち。

志遠さんのお父様は、生きる希望とまで言ってくれた。

ひとつの命を育むことで、たくさんの人に救いを与える。それを教えてくれたのは、志遠さんと晴だ。

ありがとう、本当にそう言わなければならないのは私の方だ。

私の身に起きたさまざまな奇跡、すべてに感謝を込めて、私はお父様の手を握り返した。



一年後。

霊園へと続く舗装された道を、晴がとことこと歩いていく。

その隣には志遠さんが、高い背をかがめて晴の手を取っていた。

墓石を軽く磨き、花を添え、線香を立てる。

志遠さんが手を合わせている間、私は晴を抱っこして、孫の姿がよく見えるように墓石に向き直った。

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