最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんは小さく笑ったあと、英語で運転手に行き先を指示した。

「大使に君の面倒を見ると約束してしまったからな。親孝行を手伝ってやる。君のお母様にはイギリスのもっともおいしいディナーを味わっていただくことにしよう。だがその前に――」

車は走り出し、ほどなくしてブロンプトンロードにあるイギリスでもっとも有名な老舗の百貨店にたどり着いた。

外観は宮殿のように荘厳で、とくに日が落ちた今は建物全体がライトアップされ強い存在感を放っている。

彼のエスコートを受けて車を降りながら、私はそのきらびやかな建造物を茫然と見上げた。

「ここはまさか、あの有名なハロッ――」

「お母様の思い出の地なのだろう?」

そういえば彼にも伝えたっけ。母はこの高級百貨店でショッピングをして楽しんでいたと。

「ディナーの前にまずは服を買う」

「え、服? なぜ……?」

「形から入らないとディナーは楽しめない」

売り場は商品さえ並んでいなければ宮殿かなにかと見間違っていただろう。細やかな模様が描かれた柱に、華やかな天井画、床は艶々の大理石。

見事な装飾が施されていて、これが世界に誇る老舗百貨店かと圧倒された。

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