最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
彼が足を踏み入れたのは、私でも知っている超高級ブランドのショップ。

一着何万、いや、下手したら何十万とするドレスを、彼は軽快にこれと、これと、これと、と選び取っていく。

「あの、志遠さん?」

「馬子にも衣裳というだろう。試着してくるといい」

ええと、そのことわざの意味を知っていてあえて使ったのよね?

さらりと罵った彼は、スタッフを呼びつけ私に試着させるよう指示した――のだと思う。もちろん全部英語だ。

私はフィッティングルームへ案内され、彼が選んだ大人っぽいモノトーンのワンピースに着替える。

ドアを開けると、着替え終わるのを待っていた彼が腕を組んでうーんと唸った。

「君の体型は無駄がなく、デザインがよく映える」

「それって、胸が小さ――」

「もう少し華やかなデザインの方がごまかせそうだ」

いったいなにをごまかそうとしているのだろう。聞くと落ち込みそうなのでやめる。

別のドレスを手渡され、再びフィッティングルームへと押し込まれた。

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