最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
先ほどの百貨店が宮殿なら、こちらは貴族の屋敷のように上品でノスタルジック。落ち着いたセピア色のライティングに、木製の調度品、清潔感のある真っ白なテーブルクロス。

まるで母のいた時代のイギリスにタイムスリップしたかのような、歴史的な趣を感じる。

「イギリスの料理って、どんなイメージがあった?」

「えっと……定番はフィッシュアンドチップスです?」

「まずそうって思ってただろう?」

私はうっと言葉に詰まる。

イギリス料理はおいしくないことで有名だ。

もちろんそれは昔の話で、今ではおいしいものがたくさんあるのだろうが、『イギリス料理』で検索すると上位に『まずい』が出てくるのは事実である……。

私たちは四人席に案内された。志遠さんは百貨店でもらった紙袋の中から私のショルダーバッグを取り出し、手渡してくれる。

「ここに置くんだ」

志遠さんがテーブルをトントンと叩く。

「え? 何を……」

「遺影だ。親孝行がしたいんだろう?」

私は彼に指示されるがまま、バッグから遺影を取り出しテーブルに置いた。

彼が注文した食事は三人分。私と彼と、遺影の前に豪華な料理が並べられていく。

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