最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
「わざとやっているだろう」

「違いますよ、本当に歩けないんです」

「腕にだけ体重をかけるのはやめてくれ。肩が下がる。腰を抱いてやるからもっと近くにこい」

指示を受け、私は渋々彼の胸もとに寄りかかった。いや、しがみついている状態に近い。

彼の手が腰に回り、私を支えてくれる。一見イチャついているように見えるが、お互い転ばないように、転ばせないように、それぞれが別の意味で必死になっていた。

「こんなに歩けないことってあるか!?」

「これまで五センチ以上のヒールは履かないようにしていたんです、転ぶから」

「先に言え!」

「言いました!」

こうして、ロンドンで一番奇妙なカップルができあがった……。



百貨店を出た私たちは車に乗り込み、今度こそ食事をする店に移動した。

ブロンプトンロードからピカデリー方面に向かって車を走らせ約十五分。ロンドンらしい白い外壁の建物の一階に、シックな木製の扉があった。

頭上にはパブのようなぶら下がり看板が設置されていて、ゴールドのロゴで『RESTAURANT』と書かれている。

「ここは伝統的な英国料理の店だ。二百年以上続く老舗だよ。君のお母様も来たことがあるかもしれない」

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