最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
私だってあきらめるわけにはいかない。

バッグの中には携帯端末をはじめ、財布やパスポート、お金では買えないような大切なものも入っているのだ。

ここはイギリスのロンドン、ウエストミンスター地区。

周辺にはバッキンガム宮殿やビッグベン、さらには中央官庁や英警視庁(スコットランドヤード)など政府機関がひしめいており、ロンドンの中枢とされる場所である。

有名な観光地だし、さぞ治安はいいのだろうと思いきや、そういう場所でも犯罪はあたり前に発生するらしい――いや、よくよく考えれば観光客の多さと犯罪率が比例するのは当然のことか。

「だいたい、どうして警察官がスリを見過ごすの!?」

スリの現場にはふたりの警察官が居合わせた。にもかかわらず、彼らは犯人を追いかけることなく、すーっと人混みに紛れて姿を消してしまった。

「どうなってるの、この国の警察は……!」

やがて犯人は大通りを逸れ細い路地に逃げ込んだ。私もその後を追おうとするが――。

「待ちなさい」

うしろから声をかけられ、突然腕を掴まれた。

バランスを崩した私はよろめくが、声の主に支えられ転ぶのを免れる。

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