最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
第一章 捨てる神あれば、拾う紳士あり
「ストップ! ウェイト! 泥棒! ギブミーバック!!」

私はロンドンの中心街を全速力で駆け抜けた。

おそらく大半の通行人が理解できないであろうカタコトのアメリカ英語を大絶叫しながら。

スリには気をつけていたつもりだ。人通りの多い道を選んで歩き、ショルダーバッグだって肌身離さぬよう、正面で抱きかかえていた。

携帯端末はバッグの奥深くに入れてある。ポケットから抜き取られるケースがあると聞いたから。

観光客は狙われやすいので、屋外では地図やガイドブックを開かず、さもロンドナーのように振る舞っていた、つもりだったのだが。

……ロンドナーにはなりきれず、むしろそのぎこちない態度が悪目立ちしていたらしい、見事にスリの標的にされバッグ丸ごと盗まれた。

犯行の手口は大胆不敵、目の前で堂々と持っていかれた。犯人はきっと逃げ切る自信があったのだろう。

案の定、人が多すぎて見失いそう。これを狙って、わざと人混みでスリをしたようだ。

「ソ、ソーリー! 通してください! ごめんなさい!」

通行人に激しくぶつかって睨まれもしたけれど、半泣きの私を見て状況を察したのか、舌打ち程度で許してくれた。

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