最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
この調子で一日エスコートしてくれるのだろうか。とても心強くて、私はホッと胸をなで下ろした。

「わざわざ私のために時間を割いてくださってありがとうございます」

すると、ダリルは笑顔のまま両手を広げて陽気にジェスチャーした。

「いえ、お気になさらず。ヒメのためではなく、シオンのためですから」

どことなく棘のある言い方をされ、思わずフォークを持つ手が止まる。

まるで、あなたのためではありませんと強調したように聞こえたけれど――今のは日本語訳に失敗しただけ? それともあえて念を押したの?

「そう……ですか」

返答に困り引きつった笑みを浮かべていると、彼は笑顔を崩さぬまま、組んだ手の上に顎を載せた。

「俺はシオンの世話全般を任されています。ですから、この時間も給料が出ているんですよ。あなたに楽しんでもらうことがシオンの意志であり、今日の俺の仕事なんで」

つまり、これも仕事のうちということ?

彼と心の距離が一気に開いた気がした。

「お礼は志遠さんに言うべき、ということでしょうか」

「そういうことです」

さわやかスマイルでとんでもなくドライなことを言う。

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