最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
いや、ハイクオリティな護衛兼案内役をつけてもらえて喜ぶべきだろうか。

お金は彼が管理してくれるというし、安心してロンドンを歩けそうだ。

「今日一日、どうぞよろしくお願いします」

「こちらこそ」

ダリルは景気よく返事をすると、底知れない笑みを浮かべてミルクティーを飲み干した。




「じゃあ、志遠さんとは学生の頃からのお付き合いなんですね」

「ええ。ひとつ後輩の俺をシオンはとてもかわいがってくれて」

私たちは志遠さんの家から少し歩いたところにあるカフェにやってきた。

テムズ川が見えるオープンテラスで、クロドと呼ばれる甘々のクロワッサンドーナッツとコーヒーを食べながら和やかなひとときを過ごす。

話題は志遠さんのことばかり。学生時代、志遠さんがいかに素晴らしく優秀な生徒だったかをダリルはとうとうと語っている。

「彼は本当にすごい人なんです。うちのスクールは貴族や金持ちの子息が通う排他的な学校だったので、他国籍の人間がいるだけでも珍しいんですが、その中でもとくに優秀な成績を修めていて――」

イギリスの学校にも差別やいじめは存在するらしく、国籍が違う生徒や身分の低い家の子は蔑まれることがあるらしい。

< 68 / 272 >

この作品をシェア

pagetop