最愛ベビーを宿したら、財閥御曹司に激しい独占欲で娶られました
志遠さんはキッチンに足を運ぶと、お湯を火にかけ、ティーポットの準備を始めた。

彼は棚からお茶請けとなるビスケットやクッキーを取り出す。

こんな時間からティータイムだなんて――少しだけうきうきした気分でお茶が入るのを待つ。

「ひとつ、聞いてもかまわないか?」

リーフの香りを確かめながら、志遠さんが神妙な顔で切り出してくる。

「君のほしいものはなんだ」

「ほしいもの……ですか?」

どうしてそんなことを聞くのだろう?

不思議に思いつつも、世間話だろうかと素直に考えを巡らせる。

「とりあえず今の目標は、母への孝行ですかね」

「それはしたいことだろう。それに、これから叶う予定のものだ」

それではダメなのかしらと、私は首を捻る。彼はティーポットに茶葉を入れながら質問を続けた。

「金、地位、名誉、宝石、土地、仕事、なんでもいい。なにかひとつ手に入るとしたら、君はなにを望む?」

彼はティーポットにお湯を注ぎ、茶葉を開かせる。

こぽこぽこぽ、とお湯の注ぐ音が終わると、無音のゆったりとした時間が流れる――まるで、私に考える時間を与えてくれているみたいだ。

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