迷彩服の恋人
あの合コン以来、私と土岐さんは会えていない。

理由は、駐屯地の門番に当たる[警衛]や…夜間もそこに残り対応に当たる[当直]の臨時当番が頻発しているから。それなのに。彼はこの半月…ほぼ毎晩、21時〜23時の時間内でメッセージをくれる。

嬉しいけど、忙しいんじゃないだろうか…。

「…それで?良い企画思いついてないの?……プライベート充実してるようなオーラ出てるのに。」

結花先輩の行きつけのイタリアンでパスタランチを食べながら、そう切り出された。

「結花先輩、非常食をもっと美味しく、温かく…早く作るって難しいでしょうか?土岐さんが『カレーとかもう少し温める時間短くできたら良いんですけど…。』ってポロッとメッセージで呟いたので…。」

「都ちゃん!それ、私がやってほしいわ!…隼人も『もっといろんな食品メーカーさんが作ってくれれば選べたりするのに…。』ってずっと言ってるから。」

「志貴さんも…。そうだったんですね。でも、私…自衛隊で食べられてる戦闘糧食なんて分からないですし、企画として出せるレベルじゃないかなって思ったので…まだ出してなかったんです。」

「なら、現地で体験してみて考えてみるのも手じゃない?…ってことで、これに一緒に行こ?…参加すれば戦闘糧食の試食もできるし、土岐くんにも会えるよ。この前『会えなくなった。』って言ってたでしょ。…まぁ。ある意味、それが自衛官と親しくなった時の洗礼なわけだけど…。」

先輩がそう言って私の前に置いたのは…土岐さんや志貴さんが在籍してる駐屯地のリーフレットだった。

「世田谷駐屯地創立祭……。行きます!こんなイベントあるんですね。先輩ありがとうございます、教えて頂いて。」

「どういたしまして。じゃ決まりね…。…ねぇねぇ、隼人が土岐くんの実況中継してくるのってどう思う?ほんと、そういうの…やめてあげてほしいから怒ってるんだけど。【土岐が最近楽しそうだ。】とか【土岐が『望月さんとの会う予定、ドタキャンしちゃいました…。』って落ち込んでる。かわいそう。】とか……。」

「えぇっ!?志貴さん…。それは土岐さんが絶対に嫌がるからかい方なので、やめてあげてほしいです…。」

「そうよね!?絶対に言っておくわ。なんなら『このお叱りは都ちゃんからだ!』って言って。……駐屯地祭か。毎年行くから顔覚えてくれてる隊員も増えてきたなぁ…。この日だけは、憎らしいほどカッコイイのよね…この日だけは!」

やたらと"この日だけは"を強調してくる結花先輩が、ツンデレで可愛い…。

志貴さん、愛されてますねー。
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