迷彩服の恋人
――――

【土岐さん、こんばんは。
今日、結花先輩に駐屯地祭のチラシ見せてもらいました。
当日、お邪魔しますね!
ちなみに。当日…少しでも良いんですけど、会えますか?】

【望月さん、こんばんは!
うちの駐屯地祭、来てくれるんですか?
嬉しいですね!
当日は、役割の少ない人間が事務所番や警衛を
交代でやることになってます。
なので僕は、出たり入ったりしますが…
ウロウロしてると思います!だから会えますよ!
楽しみにしてますね!】

――――

わぁ、楽しみにしててくれるんだ…。嬉しい!


出会って…助けてもらった時点で、多少なりとも彼のことは気になっていた。
まさか再会するとは思っていなかったけど、合コンで話して…メッセージでもやり取りしていく中で、土岐さんの"優しさ"に惹かれていく感覚はあった。

ただ、その優しすぎる性格が…彼にとってはコンプレックスになってるみたいだけど――。

過去に、交際相手の女性から「刺激のないつまらない男ね。」と度々言われていたようで、『"優しくしすぎること"をやめなきゃいけないのに…僕は性格上それができないんです…。』と訴える土岐さんの…あの文面を思い出すと切なくなる。

それからだろうか…。彼に寄り添いたいと思うようになったのは――。
本当に私で事足りるかどうか分からないけど、彼がよく「癒される」とか「元気になれます」と言ってくれるから、それには応えたい。

こんな風に思うのは…たぶん、私が土岐さんを好きだから――。

そんな、この半月あまりの気持ちの変化を整理しながら…眠りに落ちていった。





「都ちゃん、おはよう!あっ、今日はコンタクトでパンツスタイルにしたのね。正解かも。戦車とか乗せてもらいたいとか思うなら。」

結花先輩とランチの場で今日の話をしてから、10日が経つ。

絶好の駐屯地祭日和になった。

「戦車に乗るとかは考えてなかったですけど、動きやすい服装の方が良いかなとは思いました。…変、ですか?」

駅の外へ向かいながら、先輩に聞いてみる。

「ううん。大丈夫、変じゃない。…さ、行こっか。ここから歩いて10分ぐらいかな。」

こうして、私達は世田谷駐屯地へ向かう。



「あっ。結花とみや…じゃなかった、望月さん来たね。おはようございます。」

私達が駐屯地の門へ向かうと、志貴さんの方から…敬礼付きで声を掛けてくれる。

「あっ、志貴さん!おはようございます。今は志貴さんが警衛なんですね。…わぁ、戦闘服似合いますね!〝制服好き〟には堪らないです。…あっ。良いですよ、好きに呼んで下されば。結花先輩と、私の話をする時…〝都ちゃん〟って呼んでると聞きました。」

私達も…反射的に、帽子が無い時の【お辞儀の敬礼】を返した。
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