アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「鳳雅!!」

都筑の屋敷に帰った、揚羽。
真っ直ぐ鳳雅の部屋に向かい、バン!!とドアを開けた。

「………あ?」
鳳雅もあまり機嫌が良くない。

「なんで、四葉をあんな悲しませた?」

「そんなこと、俺が聞きてぇよ……!!」

「お前、肝心なことは話してないんだな」

「当たり前だろ!
まだ、諦められるわけない。
四葉のこれからを見る。
ただ……」

「ただ?」

「四葉も、本当に揚羽を想ってるんだな。
ちょっと、びっくりした……」

“私は、揚羽くんがいい!”

「当たり前だ!だから僕は、何があっても四葉を妻にする」

「でも、四葉はまだ……本当の“都筑 揚羽”を知らない」

「あぁ」

「それを知った時、それでも揚羽の傍にいるっつうなら………」

「わかってる。僕は四葉を“幸せ”にしたい。
四葉が幸せになるなら、僕はどうなっても構わない」


その頃の四葉━━━━━━━

“揚羽は、都筑の人間の中で一番の極悪人だ”

「そんなこと、わかってるよ……」

揚羽は、四葉を守る為なら本当に何でもする。
相手がどうなろうと、構わない。

そしてどんなに、許しを乞うても絶対に許さない。

“僕の四葉を傷つける人間は、生きる意味がない”
そんなことを言って、相手を追い詰めるのだ。


「━━━━嬢様?お嬢様!」
「……っえ!?あ、原内さ……」

「お父様とお母様が、お呼びですよ」

「あ、うん…」


リビングに向かう、四葉。
並んで座っている両親の向かいのソファに腰かけた。

「四葉」
「はい」
「今後は、パパと一緒に学校に行くよ」

「え?」
「もう、鳳雅にも頼まない」

「え……
じゃあ、帰りは?」
三島(みしま)(父親の秘書)に頼む」

「どうして?鳳雅くんは、悪くないんだよ!
私がワガママ言ったから……」
「四葉は、俺達の宝物だ。
なんなら、大学を退学する?」

「え?そんな……酷い!!」

「お前、揚羽に会ってるだろ」

「え━━━━」

「言ったよな?揚羽はダメだって!
あいつは、ヤクザの息子だ」

「でも、揚羽くんはヤクザじゃない!」

「そうだな。それを言うなら、鳳雅もヤクザの孫だもんな」
「そうだよ。でも揚羽くんも鳳雅くんも、とっても素敵な人だよ!」

「しかし琥蝶(こちょう)(鳳雅の父親)は、ヤクザと縁を切ってる。
今では、九重と肩を並べる資産家だ」

「それが理由なの?」

「あぁ、そうだよ」

「私の気持ちは、どうなるの?」

「じゃあ、聞くが!
お前は、ヤクザの女になれるのか?
揚羽の隣で、人が傷ついていくのを平気な顔で見ていられるのか?」
「それは……」

「四葉には無理でしょ?」

「お母様…」

「パパとママはね。
あくまでも四葉が大事なの。
揚羽さんが、普通の方だったらこんなこと言わない。でも…揚羽さんは普通じゃない。
四葉が傷つくのが目に見えてるのに、揚羽さんとのお付き合い許可する親なんかいないわ。
揚羽さんが悪いなんて言ってないわ。
ただ、揚羽さんの環境が悪いの。
揚羽さんの残忍なところさえなければ、揚羽さんもとても素敵なのは知ってる。
揚羽さんと鳳雅さんは、いつも四葉を守ってくれてたから。
……………四葉…貴女は優しい子だもん。
だから、鳳雅さんの傍にいる方がいいの。
鳳雅さんは、とても優しい方だから。
そうゆうとこ、琥蝶さんにそっくり」

「そして揚羽は、毅蝶(きちょう)(揚羽の父親)に似て……いや…毅蝶よりももっと、残忍だ」

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