アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「行くな、四葉!!」

手を掴む鳳雅。
四葉は泣いていた。

「鳳雅くん、私は揚羽くんじゃなきゃダメなの……」
「四葉…」
「私は…っ…ひっく……揚羽く…いい……」

「お前、わかってんの?」

「え……」

「揚羽は、ヤクザの息子だぞ」

「わかってる!」

「わかってねぇよ!!」

「鳳雅…く…」

「俺のチームの奴等でさえまともに話せないお前が、ヤクザの女になれんのかって聞いてんの!!」

「それは……」

「しかも!揚羽だぞ!!
お前だって、わかるだろ!?
揚羽が、どんな人間か……!!」

「………」

「揚羽は、都筑の人間の中で一番の極悪人だ」


━━━━━━━━━━━━━━
「お嬢様!!」
「四葉!!良かった……」
原内と母親・葉月(はづき)が駆け寄り、葉月が四葉を抱き締める。

「鳳雅、今何時だと思ってる!!」
四門が、鳳雅に怒鳴る。

四葉の門限は、18時。
しかし、19時を過ぎていた。

「すみません」
「休日に会わせる許可をだした途端、これだ……」

「お父様!!」
「何だ!?」

「鳳雅くんは悪くありません!
私が、ワガママ言ったの。悪いのは、私です!」

「四葉、もう…許可しないからな」

「わかってるよ」



「━━━━鳳雅くん、ごめんね」
玄関で、鳳雅を見送る四葉。

「明後日、迎えに来るから」
「え?もう…それは……」

「“今まで通り”俺が、送り迎えする!」

「でも……」
「四葉」
「え?」

「お前の“覚悟”見せてよ」

「え?鳳雅くん?」

「お前が本気で“あの”揚羽の女になるっつうなら、きっぱり諦める!」

そう言って、鳳雅は四葉の頭をポンポンと撫で出ていった。


『━━━━━━遅かったね。何かあった?』
揚羽に電話をかける、四葉。
揚羽の優しい声が、四葉の耳に浸透する。
確かに揚羽程、恐ろしい人間はいない。
でも四葉には、こんなに優しい。

「揚羽くん」
『ん?』
「会いたい」
『え?四葉…』

「会いたいの!!
今から屋敷を抜け出すから、何処かで会えない?」

『四葉…わかった。僕が四葉の部屋の窓の下まで行く。また連絡するから、待ってて!』

数分後━━━揚羽から着信が入る。
『ベランダの窓の下、見て?』

ベランダに出て、下を覗いた。
揚羽が微笑み手を振っていた。

「揚羽くん」
『どうしたの?ご両親と喧嘩?それとも、鳳雅?』
「あのね━━━━」

四葉は、先程の話を揚羽に話す。
『そう…』
「私は、揚羽くんがいい!」
『うん』
「揚羽くんじゃないと、私は……」

『大丈夫』
「え?」

『怖い思いも、辛い思いも四葉にさせない!
言ったよな?四葉が好きでいてくれるなら、何でもするって』
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