アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「揚羽くん!やめて!
戻ろ?」

四葉は、揚羽に懇願する。
しかし揚羽は、首を横に振り言った。

「四葉、目を瞑って、耳を塞いでて?
いい子だから、できるよね?」
「嫌だよ!私は大丈夫だから、戻ろうよ!」

「だって四葉。
“これ”はもう…生きる価値ないよね?
僕の四葉を傷つけたんだから」
「で、でも!私が突き飛ばしちゃって、文人くん頭を打ったの。だから、お互い様ってゆうか……」

「なんで突き飛ばしたの?
何もされてないのに、突き飛ばしたの?
四葉はそんなことしないでしょ?」
頬に触れ、目線を合わせる揚羽。

「それは……」

「ほら、やっぱりこれが傷つけてる。
もう許されないよ。
はい。目を瞑って、耳を塞いで?
大丈夫。すぐに終わらせる。
それとも、見る?
これが、ぼろぼろに死んでいくとこ」

揚羽はどうしてこんなに淡々と“死”を口にできるのだろう。

「あ、揚羽様!」
そこに文人が声をかけてきた。

「………」
「揚羽様!すんません!もう、四葉ちゃんに触らないので、許してください!!」
「………」
「揚羽様!」

「うるさい!!貴様の汚ない声なんて聞きたくもない。
四葉に触らないなんて、当たり前の事だ。
四葉に触れていい人間は、限られている。
鳳雅の仲間なら、わかってたはずだ。
それに、わかってるだろ?
“許されない”んだよ、もう……」
揚羽はゆっくり立ち上がり、文人に近づいていく。

「あ…あ…揚羽くん!!お願い!」

「何やってんだよ……!」
「あ、鳳雅くん!揚羽くんを止めて!!お願い!」

四葉は鳳雅にしがみつき、必死に懇願する。

「揚羽!!」
「これが、四葉を傷つけた。
今、制裁を加えようとしてるとこ」
「は?文人は俺の仲間だ!」

「だから?」
「だから!やめろよ!!」

「なぜ?
四葉を傷つける奴は、この世に存在する価値ないのに?」

「それは揚羽の世界だろ?」

「そうだ。だから、僕が排除する」
そう言って、文人の胸ぐらを掴んだ。
そして、グッと持ち上げた。
少しずつ文人の首が絞まっていく。

「うがぁぁ……ぁ…」

「揚羽!!だったら、俺がやる!」
「は?鳳雅にできるの?」
「文人を二度と、揚羽と四葉に会わせないようにする」
「は?」
「文人が四葉の前に現れなきゃいいんだろ!?」

「もし現れたら?」

「その時は、揚羽が殺れよ!
頼む。四葉の前でこんな残酷なこと、やめてくれ!」
顔を歪め、必死に懇願する鳳雅。
四葉も、悲しそうに顔を歪めている。

その姿に、パッと手を離した揚羽。

「わかった」
と言い、震える四葉を優しく抱き締めた。
< 18 / 46 >

この作品をシェア

pagetop