アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
「え……あ、あの…来ない……で、くださ…」

いつもなら、安易に四葉に近付かない。
四葉が怖がるからと、揚羽や鳳雅にきつく言われている為だ。

でもかなり酔っぱらっていて、その事を忘れていたのだ。

「ヤバ…ヤりてぇ……
ねぇ、ちょっとでいいから触らせて?」
頬に触れる、文人。

一気に鳥肌が立つ。
でも振り払えない。
怖くて、身体が固まっていた。

文人から香る煙草と酒の臭いに、吐き気までしてくる。

(助けて、揚羽くん!!)
叫びたいのに、声が出ない。

「あ、これ…揚羽様と同じだ!」
「え……」
文人が、クローバーのネックレスに触れた。

「触らないで…」
「あ、ごめんね!てか、凄っ!!」
襟の隙間から鎖骨が見え、キスマークを見つけた文人。

「揚羽様の独占欲、凄いっすねー
でも、いいなぁー。
俺も四葉ちゃんとヤりたーい!
四葉ちゃん、何かつけてんの?
いい匂いがするぅ」

「嫌……」
「香水じゃねぇよな…?」
「やめ……」
「ほんっと、可愛い~」

「嫌!!」
四葉は、力の限り文人を突き飛ばした。

ガン━━!!!と音がして文人は尻もちをつき、軽く壁に頭を打ち付けた。

「……ってぇ…!!!?」
「あ、ご、ごめんなさい!!!」
慌てて駆け寄る、四葉。

「━━━━にすんだよ!!?」
一瞬で、組み敷かれる四葉。

「キャッ!!や、やめ━━━━」

「いてぇよ!!どうしてくれんのー?
頭、ガンガンするんだけど?」
「ごめんなさい!!」
床に両手を縫いつけられ、びくともしない。

「どうしようかなぁー
あ!キスしよ?そしたら、許してあげるー」

「え?そん…な…こと…できない……」
ゆっくり文人の顔が近づいてくる。
四葉は震えながら、顔をそむけた。


「何をやってる」
声のする方を見ると、揚羽がいた。

「あ…あ…揚羽く……」
「ゲッ…
━━━━━━━!!!!?揚…羽……さ、ま…」

揚羽の雰囲気や表情が、例えようのないくらい恐ろしく落ちていた。

「そこ、退け」
文人は、ゆっくり四葉から離れた。

四葉に近づいた揚羽は、優しく起き上がらせ自身のジャケットを羽織らせた。
「四葉、もう大丈夫だよ。
怖い思いさせてごめんね」

「揚羽く…」
四葉は震えながら、揚羽にしがみついた。

「大丈夫、大丈夫だよ……」
ゆっくり揚羽の大きな手が、背中を上下する。

「揚羽くん」
「ん?落ち着いた?」
「うん…もう、大丈夫だよ」
「良かった。
四葉、ちょっと待っててね」
「え……」

ま、まさか━━━━━━!!!!?
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