アゲハ蝶は、クローバーを一人占めしたい
四葉がゆっくり、揚羽達の所に戻る。

揚羽と鳳雅は、女子学生に囲まれていた。
「揚羽様~」
「鳳雅様、私達と回りません?」

「そこ退け。四葉がもうすぐ来る」
「お前等、邪魔!」

「えーー!でも四葉ちゃん、欲張りだよねー」
「鳳雅様の婚約者なのに、揚羽様も一人占めなんて!」

「「は?」」
揚羽と鳳雅の雰囲気が、一気に悪くなる。

「このままじゃ…どっちも失うんじゃなーい?」
「二兎追うものは一兎も得ず(笑)?」

「おい!」
「え……鳳雅…さ、ま…?」

「貴様に、四葉の何がわかる」
鳳雅が、女子学生達を睨み付け言った。

「え……ご、ごめんなさい…!」
鳳雅のあまりの雰囲気に、ビクッと身体を震わせる。


「鳳雅」
「あ?なんだよ!?」

「もういい。こいつ等の声を聞くだけでも、気色が悪い。それにもう、会うこともない輩の話を聞いても時間の無駄だ」
「揚羽、殺んの?」

「当たり前だ。
四葉を苦しめる人間は、この世に必要ない」

「え……揚羽様!!ご、ごめんなさい!!」
「ごめんなさいで、許してもらえると思うな。
僕達の前から消えろ!」


「揚羽くん!!やめて!!」
そこに四葉が、駆け寄ってきた。

「四葉!」
今までの冷たく恐ろしい表情から一転、柔らかく優しく微笑んだ、揚羽。

「揚羽くん、もうやめて!
私は、大丈夫だから」
「四葉…」
「揚羽くん、帰ろ?
鳳雅くんも!」

「…………わかった」
「あぁ…」

そして三人は、一度大学を出たのだった。

「まだ、門限まで時間がある。
四葉はどうしたい?」
揚羽が優しく微笑み、四葉に問いかけた。

「…………二人になりたい」

「え?四葉…?」
「鳳雅くん、ごめんなさい。
私、今は揚羽くんと二人になりたい」

「………わかった。
帰る前に連絡しろよ」
鳳雅は少し切なく瞳を揺らし頷いた。

「うん。ごめんね……」

「じゃあ、四葉。行こうか?」
「うん」
揚羽と四葉は、並んで鳳雅と反対方向に歩き出した。


「…………んっと…なんで俺は、こんな苦しい恋をしてんだろ……」
鳳雅は、そんな二人の後ろ姿を見ながら呟いたのだった。


「四葉、どこ行きたい?」
「ホテル」
「え?ど、どうしたの?」
いつもの四葉からは想像できない言葉に、さすがの揚羽も動揺していた。

「二人っきりになりたい」

四葉は揚羽を見上げ、はっきりした口調で言った。
< 32 / 46 >

この作品をシェア

pagetop