魔法の手に包まれて
 そうこうしているうちに背後から、園児たちの賑やかな声が聞こえてきた。どうやらお帰りの時間のようだ。
 彰良は事前に園長から、窯ラードのチラシを保護者の方に手渡してもいいという許可を得ていた。目の前を通り過ぎる保護者に「よかったら、来て下さい」とチラシを手渡す。すると、それに目を落とす保護者は「えー、ろくろとかやってるんですか。子供でもできますかね?」と興味を示してくれる。

「ええ、小学生とか、よくやっていますよ」

「そうなんですね。ろくろ、一度やってみたかったんですよね。貴重な体験ですよね」

 陶芸は日常の一部を非日常の時間にしてくれる。少なくとも、この保護者はそう思っているようだ。

「そちらの連絡先に連絡していただければ。サイトからも予約できますので」

「わかりました。今日は、ありがとうございました」
 最後は子供に手を引っ張られながら、慌ただしく帰っていく。彰良は、目の前を通り過ぎていく保護者にチラシを配って宣伝をする。といっても、たったの五人であるが。

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