魔法の手に包まれて
「いえ、取りに伺います」
 答えたのは園長だ。
「千夏先生、取りに行けますよね?」

「あ、はい。取りに伺います。せっかくですから、早く見てみたいですしね」

「わかりました。では、できあがりましたら、幼稚園の方にお電話いたします」

「平日の、一時から三時の間ですと、比較的電話に出やすいです」

 園長のその言葉に「わかりました」と彰良は頷くと、残りのコーヒーを一気に飲み干した。

「すいません、ゆっくりしてしまいました」
 考えてみたらすごい絵面だ。女性三人に対して男性は彰良一人。いや、女性グループで陶芸体験をしたいという申込だって受けたことはある。だが、その彼女たちも雰囲気が違う三人。それは、教諭という職業柄か。

「今日は本当にありがとうございました。作品のできあがりを楽しみにしております」
 彰良を車まで見送ったのは千夏だった。

「はい、電話します」
 彰良は運転席のドアを下げ、見送る女性教諭三人に軽く手を振って、車を出発させた。
< 24 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop