魔法の手に包まれて
 彰良が持っていなくて、千夏が持っているものとは何だろう。
「それは、何ですか? 先生になくて、私にあるものとは」

「先ほども言いましたが。私は子供が苦手です。ですが、先生は子供たちをよく見ているし、子供たちに寄り添っている。先生が担任だったあの五人の子供たちは、この二年間で成長を遂げているはずですし、先生のことを慕っているはずです。それが、あの子たちの担任が先生ではなく、私が担任だったら? 三日で子供たちに嫌われる自信があります」

「どんな自信ですか」
 思わず千夏は笑ってしまった。それを見て彰良も口元を綻ばせる。

「やはり、先生には笑顔が似合う。子供たちもその笑顔を見て、笑顔になっているんですよ」

 彰良はゆるゆると重ねられた手を解く。急に体温を失ってしまい、千夏は喪失感に襲われた。

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