魔法の手に包まれて
「東京。できれば行きたくないところですが、私にも東京のギャラリーに作品を出さないかという話がきているんですよね」

「まぁ、素敵じゃないですか。お休みの日だったら、必ず見に行きますから」

「ですが、東京なので。断ろうかと思います」

「なんですか、その理由は。彰良さんには欲はないんですか?」

「ありますよ。あなたを私のものにしたいという欲は」
 彰良が熱い眼差しで千夏を見つめてくる。この眼差しに彼女は弱いのだが。

「そういうことではなくて、ですね。陶芸家として、こう、周囲に認められたいっていうか。たくさんの人に作品をみてもらいたいっていうか、そういう欲です」

「そうですね。昔はありましたが。今はあの田舎の工房で、好きなときに作品を作って、好きな時に教室を開いて、とにかく好きなことを好きなようにしているので、幸せなんですよね」

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