離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~
「え、永嗣さん!? 何を」
「素直にさせようと思って」
そんな台詞とともに、私が連れてこられたのは例の主寝室のベッド。
「もっとでかいベッドを買ってもいいな」
「な、なぜです」
「色々するため?」
永嗣さんが唇をニヤリと上げる。悪い顔にですらきゅんとして──見惚れてしまう。永嗣さんはそんな悪い顔で私を抱き上げたまま、ベッドに腰掛ける。それから私を抱え直した。後ろからぎゅっと抱きしめられているような姿勢──耳元に、永嗣さんの低くて少し掠れた声。
「風香」
「っ、は、はい……」
返事をしたけれど、帰ってきたのは永嗣さんの耳の裏へのキスだった。
「……っ!?」
びくりとした肩をぎゅっと抱きしめられて抑えられ、そのまま耳の裏をちろちろと舐められる。あられもない声が出て、私は身体をくねらせた。くすぐったさと快感のあわいで、頭がくらくらとしてくる。
永嗣さんが喉で笑う気配。
それからこめかみに、頭に、頬に、また耳にとキスが降ってきて──ぽうっとした頃、永嗣さんは私の左手をそっと持ち上げた。
その左手の薬指、そこに永嗣さんはキスを落とす。とろんとしかけていた意識が、ぶわりと息を吹き返した。きゅん、としすぎて。
永嗣さんは私の反応に気をよくしたのか、指にキスを繰り返す。付け根に、指先に、爪に、内側に。
「可愛い」
永嗣さんが笑い声とともにそう言って、私の頬がめちゃくちゃに熱くなる。ああ、どうしよう、後ろ向きで良かった。もしこんな顔を彼に見られたら、……こんな真っ赤な顔を見られたら、恥ずかしすぎて死んでしまう……
なんて考えていた思考を、永嗣さんがぽきりと折る。私の薬指を「かぷっ」と噛むことによって。
「え、永嗣さ……!」
「悪い。あんまりにも可愛いから食べてしまいたくなって」
永嗣さんは薬指への甘噛みを続けながらそう低く言う。鼓膜を震わせる甘い低音。お腹の奥が、きゅんとしてしまう。