離婚するはずが、エリート警視は契約妻へ執愛を惜しまない~君のことは生涯俺が守り抜く~

(どうしよう……)


 私は目をぎゅっと瞑る。
 私、こんなにフシダラな女だったのかな。
 永嗣さんに触れられるだけで、身体の奥から蕩け落ちてぐずぐずになってしまいそう……!

 永嗣さんは私の指と爪の間に舌を這わせる。

 そこから生まれた官能に、……驚きすぎて、私は彼を振り返った。
 永嗣さんの熱い視線にぶつかる。
 その視線だけで、脳が溶けてしまいそう。


「風香」


 指を離しながら発された、少し掠れた、彼の声。

 つ、と彼の親指が私の頬を撫でる。男の人の、ほんの少しかさついた指先。

 その親指は、やがて私の唇を優しく撫で──そっと私の口の中に割入る。

 永嗣さんの指が、私の口の中を撫でていく。歯茎や歯、頬の内側の粘膜を、まるで猫でも可愛がるかのようにヨシヨシと。

 私は彼の親指を噛まないよう、必死に口を開いて──そうして口の中から生まれる快楽に頭を混乱させていた。喉が震え、淫らな声が出てしまいそう。

 永嗣さんはそれを、まるで獰猛な獣が舌舐めずりするかのような目線で眺めている。ギラギラと、情欲がこぼれ落ちそうなその視線──荒く息を吐いてしまった私に、永嗣さんは「で?」と獣の瞳のまま首を傾げた。

 私の口の中から、彼の指が出て行く。

 今度は彼の太ももの上、横抱きにされ顔を覗き込まれて──お互いの鼻の高さ分の距離で、彼の瞳が細められた。


「何を言いかけた? いや、──何をひとりで納得したんだ?」

「え」

「俺の親に会わせる前に籍を入れたのは、とにかく早くきみを俺の手元に置いておきたかったからだ。他に理由なんかない」


 そう言って、すり、と私の頭に頬擦りをする。


「──あ」


 私はしゅん、と眉を下げた。
 変に言い淀んだことで、心配をかけてしまったらしい。
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