妄想腐女子の恋愛事情  倉橋琴音と影山海里

BL本の処分

翌日
琴音は、自分の部屋のフローリングの床に、座り込んでいた。

景山海里との濃厚なキスが、
脳裏をよぎる。

トキと香山教授の妄想より、
リアルの方が、インパクトはある。

琴音は振り払うように、
ゆるくウェーブのかかった茶色の頭を振った。

直面すべき問題は、
この段ボール箱をどうするかだ。

琴音は、自分の部屋に積んである段ボール箱
(それもすべてBL本が詰まっている)を、6箱、眺めていた。

3月末に、今住んでいる賃貸アパートの更新がある。

職の無い琴音は、払える貯蓄がなく、取りあえず、実家に戻るしか選択がなかった。

実家の家族には、さすがに見られたくないものだ。
トランクルームを借りるほどの、
金銭面の余裕はない。

売り払うには、もったいない。

「いやぁ・・どうするか・・・」

ピンポーン
ドアチャイムが鳴った。

不動産会社の人だろう。
退去の書類を持ってくると、
言っていたから。

「はい、はーい」

ドアを開けると、
そこには、景山海里が立っていた。
「ちょっと、いいかな?」

「あ、こんにちは・・」
琴音は、心臓がドキンと跳ね、
赤くなって、思わず口元に指が触れた。

景山はいつものように、
ややぶっきらぼうな調子で

「塾を続ける事にした。
それで君にも、続けてもらいたいと思って来たのだが・・・」

景山は、廊下の先に積んである、
段ボールの山を見た。

「引っ越しをするのか・・」
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