お嬢様のワガママ
「おらぁ、金出せやガキぃ!」

響く怒声の下で、涙目になりながら震える一人の少年。
一見少女かと見間違うくらいに白い肌と長い睫毛。
そして少し長めの茶色の髪。
細く、華奢な体つきをしていて、明らかにその辺の女の子よりも弱いですと主張しているような少年だが、実際そうらしい。

―――彼の名は桐生 弘人(きりゅう ひろと)。
どうやら運悪く不良に絡まれ、カツアゲされているようだ。
しかし誰も助けてくれない・・・なんて酷い世の中なのだろう。
弘人は意を決したように男を見上げ、口を開いた。涙目になりながら。

「むむむ無理です・・・!僕、急いでるんで・・・」

「あぁ!?」

「ひぃ!!!」

・・・意を決して否定したものの、全く効果が無いどころか、かえって男を怒らせてしまったようだ。
どうしよう、と途方にくれる弘人の目の前に、不意に・・・
・・・一人の人影が現れた。

「やめたらいかがですの?見ていて嫌気がしますわ」

・・・・・え?
弘人は不意に聞こえた声に、その声の主を見上げた。
そこにいたのは・・・少女だった。
綺麗な長い黒髪を赤いリボンで結んでいて、弘人に負けず劣らずの白い肌。
やはり細く華奢な体つきだ。
そして・・・小学生かと疑いたくなるほど小さな身長。(推定125センチ)

しかし彼女が着ている制服は、間違いなく陽琉高等学園のものだ。

「あぁん!?うるせぇよガキが!」

男はそう言って彼女を殴ろうと立派な筋肉に包まれた腕を振るったが、どういうわけか次の瞬間には、地面に伏していた。

「野蛮ですわね・・・。
力の差、思い知りました?」

なんと男を伏していたのは、先ほどの少女だった。
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