お嬢様のワガママ

陽琉高等学園・生徒会

―――陽琉高等学園、1年C組。

弘人は思い切り教室のドアを開け・・・たかったのだが、目立つのは嫌なのでそっと自分が通れるだけの隙間を開けて、そろそろと自分の席へ座った。

「ふぅ・・・」

運良く弘人の席は一番後ろだったため、誰にも気付かれなかった。
・・・影が薄いとも言う。
弘人に気付き、隣の席の少年はにっこりと笑って軽く手を上げた。

「よお桐生。遅かったな、寝坊か?」

「う、うん。おはよう風早くん」

風早くん、と呼ばれた少年はニカッと人懐こく微笑んだ。
金髪にピアス、着崩した制服など、一見不良のようだが、学年2位という秀才だ。
そのギャップに惹かれる女子も多く、意外と人気がある。
・・・彼の名前は風早 千歳(かざはや ちとせ)。
女のような名前が本人曰く気に入らないらしいが、そんなことは微塵にも感じさせないくらい男気溢れる生徒だ。
つまり、弘人とは正反対なわけだが、何故か二人は仲がいい。

・・・その日も、二人は適当な雑談をして、授業は終えた。




―――そして放課後。
弘人は生徒会室の前にいた。
理由はもちろん、姫香に呼ばれたからだ。
危うく帰りそうになった弘人に、
『1年C組の桐生 弘人くん!忘れてはいないでしょうけど、放課後ちゃんと生徒会室へ来てくださいませ!』という姫香のアナウンスが入ったために、思い出したのだ。

・・・で、今のこの状況なわけだが。

「うぅ・・・は、入ってもいいのかなぁ?」

持ち前の優柔不断さから、弘人は中に入るのを躊躇っている。
陽琉高等学園生徒会といえば、下手すると校長よりも高い権力を持っているというある意味恐ろしい委員会だ。
もちろん、生徒会室なんてよっぽどのことが無い限り先生でさえ入れないため、弘人のような一般生徒が入ることなんて無いのだ、普通は。

「・・・し、仕方ないから入・・・」

「遅いですわ!!」

ようやく中に入ろうと足を踏み出した弘人の顔に、思い切り開いた扉が物凄い勢いでぶつかり、弘人はバタンと倒れた。

「あら!ヒロト、遅いですわよ!」

地面に突っ伏している弘人にそう声を掛け、姫香はにこやかな笑顔を向ける。
< 5 / 11 >

この作品をシェア

pagetop