メルティ・ナイト
その冷静な言葉にはっとする。
茉央さんは心底不思議そうに首を傾げている。
そうだ、当の本人をずっと置いてきぼりにしていた。
わたしが慌てて口を開く前に、赤坂さんがそれを制して、簡単に説明してくれる。
「すずかちゃんがロン高に転入してきたのは、幼なじみの女の子に再会するためだったらしいんだけど、その子の名前が茉央と同姓同名っていう偶然が起こったわけ」
わたしがあたふたと説明するよりも、うんと簡潔にわかりやすくまとめてくれた。
おかげで茉央さんは納得したようにうなずいてから、やはりまだ気になることがあるのか口を開く。
「でもなんで、ロン高にその子がいると思ったの?」
「バスで茉央のこと噂してた輩がいたらしくて、たぶんそれで、すずかちゃんは探している子のことだと勘違いしたんじゃないかってとこ」
赤坂さんがそう言うと、茉央さんは心当たりがあるように苦い表情で髪をかきあげた。
「あー……ごめん。俺のせいかも」
急に面と向かって謝られて、慌ててぶんぶんと手を振って否定する。
「なんで謝るんですか……! 勘違いしたのはわたしですしっ」