メルティ・ナイト
「ひえ、茉央クンが女の子に笑いかけてる……。大事件だ」
だ、大事件?
わたしたちのやりとりに、楓くんがありえないと言うふうに口を挟む。
楓くんの言葉に、こちらが驚いてしまう。
ただ微笑み合っているだけでそんなことを言われるなんて、……茉央くんは女の子と話すことが苦手なのかな。
そんなふうには思えないけれど、わたしには転入生だから無下にはできなくて、少し無理しているのかもしれない。
ちょっとだけ申し訳なく思っていると、茉央くんは楓くんに威嚇するように舌を出したあと、わたしから目線を外した。
その様子に、楓くんは諦めたようにわたしを見て話題を変えた。
「てか、すーちゃん可愛いからさ。ほかの男たちに狙われないよう俺らが守るね」
あざとい上目遣いをする楓くんのほうが何百倍も可愛いと思うけれど、気遣いに嬉しくて笑顔でうなずいた。