身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


 枕元に置いてあるスマートフォンを手に取り、写真のアイコンをタップする。

 アルバムの画像を開くと、自然と小さなため息が漏れ出た。

 三枚ほどスクリーンショットで残した、水瀬先生とのトークアプリでのやり取り画面。

 初めて一緒に夜を過ごした翌日にもらったお礼と、次また誘ってもいいか訊かれた内容。

 なんでもない日にくれた他愛ない【元気?】なんて気遣い。

 最後は体調不良だと言って別れたあとに、何度も私の体を心配してくれるメッセージを送ってくれていた。

 どれも水瀬先生の優しさが垣間見えるメッセージ。

 でも、もうこうしてスクリーンショットの画像でしか見返すことはできない。

 遼くんを巻き沿いにして嘘をついた日、水瀬先生から何度も着信があった。

【一度会って話したい】

 そんなメッセージも入っていた。

 水瀬先生からスマートフォンに着信が入るたび、心臓を握りつぶされるような苦しさに襲われた。ぎゅうぎゅう締め付けられて、痛くて。

 ごめんなさい、嘘なんです。本当はあなたのことが好き。あなたのことだけを想ってます。

 後先考えず、通話に応じてそう言ってしまいたかった。

 だけど心を鬼にして、水瀬先生の未来を守るために全ての登録を削除した。

 交換した番号も消し、メッセージアプリのメンバーからも削除した。

 そのとき最後に、このスクリーンショットを残したのだ。

 水瀬先生と私が繋がっていた唯一の証。

 こんなものしか残せなかったけど、今でも一日に数度見返しては彼のことを考えている。

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