身を引くはずが、敏腕ドクターはママと双子に溢れる愛を注ぎ込む


「詩、パパの話をよく聞いて。パパも今帰ってる。ママには、今からパパが救急車を呼ぶから、ママのそばに月と一緒にいるんだ。わかったか?」

『ママ、だいじょうぶなの? おきないよ?』


 不安から泣き始めてしまう詩。

 当たり前だ。子どもたちだけの中、目の前で母親が倒れたのだ。


「大丈夫だ。パパが助けるから、絶対に大丈夫」


 着の身着のままスクラブ白衣の姿で車に乗り込み、地下駐車場から急いで車を出す。


「詩、すぐ行くから。ママを頼む」


 そう言い残して通話を終わらせ、そのまま救急へ連絡をする。要請を済ませ、その後続けてマンションのコンシェルジュに緊急の事情を伝える電話をかけた。

 もしかしたら、ただの貧血ではないのかもしれない。

 突然の出来事に動揺しながら、自宅までの道を急いだ。

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