こいろり!



華花に真っ直ぐ目を向けると、その瞳が戸惑うように揺れるのが分かった。



「華花、本当にごめん。お前があんな目にあう必要なんかなかったのに……」

「やめてよ、いいのよ!謝らなくても。確かに怖かったけど、私はちゃんと無事だったわ!それに、泰良の方がひどい怪我をおって……」


「そういうことじゃねーよ!無事だったから良かったじゃねーんだよ!!マジで、あんな一生トラウマになるような怖い思いさせられてさぁ。俺がちゃんとした奴だったら、拉致られるなんてこと、なかった……俺なんかと出掛けてなければ…」


ぐっと息が詰まる。喉が痛い。目頭が熱くなってくる。
こんな小さな女の子1人、守れなかった自分が情けなくて堪らない。

ぐっと拳に力を入れたところで、華花がフフッと笑った。いつもと変わらない笑顔で。



「じゃぁ、私で良かったわ!璃香子じゃなくて本当に良かった!」

「…………」

「お嬢様、それは…」


なんで、華花にこんなこと言わせてんだよ。
どっちも、駄目だろ──?


華花より、俺の方がよっぽど子供(ガキ)じゃねーか。



目から熱い何かが溢れて頬を伝っていくから、隠すよう顔を両手で覆った。




< 146 / 178 >

この作品をシェア

pagetop