こいろり!



「……泰良くん、どうしたの?」

「ん、どうしてるのかなって、お見舞い……」


スーパーの入り口に売ってた小さな花束を渡すと、璃香子は「ありがとう」とはにかむように笑った。


俺の中にある乱暴な気持ちが、一気に緩和されていくのが分かる。

俺はこれが欲しかった。欲しくて堪らなかった。何で俺のモノじゃないんだろう。
抱きしめたいけど、でも、背中に手を回すことは絶対にできない。



「急に来てごめん」


璃香子はの家は母子家庭だ。母親が帰ってくるのはいつも夜遅い。
狭い2DKの奥の畳の部屋に、無造作に敷かれた布団。璃香子はここで休んでいたようだ。

璃香子が布団に座るから、俺もすぐ横の畳の上に腰を下ろした。



「こっちこそ、代わり田渕さんのお(うち)にケーキ届けに行ってくれてあがとう」

「別にいーよ。つかさー、家《いえ》ん中でお茶とかすんならはじめに言えよ!」

「ごめんごめん!でと、華花ちゃんと仲良くしてるみたいだね。ふふ、あの子可愛いよね」

「はぁぁ?そうかー?くっそ生意気なガキじゃん」

「えー、そんなことないよ。素直で良い子だよ」


クスクスと笑う璃香子を見て。やべー…周殴っちゃったし華花にも怒鳴っちゃったし、もう届けに行けねーかもと不安が(よぎ)る。


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