儚く甘い
よくケンカもした。
年頃になるとほとんど喧嘩はしなかったものの、一回の喧嘩の大きさは幼いころよりお互いに力も強くなり、激しかった。

最後の喧嘩をした日を今でもよく思い出す。

「バイクも」
「ん?」
厨房を見たまま話し始める達哉にみわは視線を向けた。
「あのバイクも兄貴のバイクだ。」
「そうなんだ」
自分で整備をしながら大切に乗り続けているバイクは兄の物だった。
買ってからまだ数回しか乗っていなかったバイク。
何年も乗らずにいた兄のバイクを、達哉は自分で整備して乗り始めた。
そのきっかけをくれたのは・・・

「乗せてくれてありがとう。」
達哉がみわの方を見る。
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