儚く甘い
「喧嘩したことないの。正しくは私、けんかの仕方を知らない。」
「・・・」
達哉はみわの方に視線を移す。
「達哉はお兄ちゃんと喧嘩したことある?」
「そりゃあるだろ。俺たちなんて殴り合いもしょっちゅうだった。」
「男同士ってそうなんだ。でもうちはお兄ちゃんたちもほとんど喧嘩しなかったからなー。」
「家によって違うんじゃないか」
「そっか」
達哉はもう一度厨房に視線を移しながら、兄と喧嘩をした日のことを思い出していた。

2歳年上の兄とは何かとぶつかることが多かった。
でも、お互いを大切にしている気持ちは理解し合っていたつもりだ。

小さいころからなんだって兄の真似をして、兄について回っていた達哉。
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