儚く甘い
こうして娘と、好きな人の話をすることが夢だった。
その夢がかなってうれしさ半分。
結末が見えている娘の気持ちを考えると切なさ半分。

やるせない思いを心の中で夫に語り掛ける。

でももう決めている。

娘の命が長くはなくとも、娘が笑って幸せな思い出をたくさん作れるように守り支えると。

大きく深呼吸をすると、溢れそうになっていた涙をこらえたまま、母はキッチンに向かう。

食欲の落ちている娘が食べやすいものをたくさん作ってあげたい。

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