儚く甘い
みわの体に起きた変化によって、再び家族の日常は大きく変わってしまった。

今、点滴をするみわに付き添ってくれている兄も、難しそうな医学書を見ている目の下には深く大きなくまがある。

優しく微笑む顔は昔から変わらなくても、その顔は明らかに疲れていた。


「気分は?」
「平気。」
「よかった。あと、30分くらいで終わるから、そしたら送ってく。」
「いいよー。バスがあるし。」
「ちょうど家に用事あったから。」
隆文は再び椅子に座って、医学書を開き始めた。

みわは、見慣れたリクライニングチェアから見える窓の外の景色を見つめた。
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