儚く甘い
「もしも私が私じゃなくなったら、もしも私が達哉を忘れてしまったら」
みわは自分をまっすぐに見つめている達哉を、見つめ返す。

頬に触れている達哉の大きな手を握る。

「達哉も私を忘れてね?」
「みわ」
「私は大丈夫。だって、達哉を忘れてるってことは、全然痛くないから。大丈夫。」
「・・・」
「私を忘れるくらい素敵な恋をして、夢の続きを一緒に見てね。」
みわの瞳が揺れる。

夕日に照らされてゆらゆらとオレンジに揺れるみわの瞳から大粒の涙が伝う。

「私をちゃんと忘れて?」
震える声で言うみわ。
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