儚く甘い
隆文は寝ているみわを抱き上げて、みわの部屋に運んだ。
母は、みわにそっと布団をかけて、その横に座ると、みわの頬や髪を撫でる。

「思ったよりも薬が効かなくなるペースが速いんだ。」
「・・・」
隆文が母に小声で伝える。
「点滴も1週間に一度だと、体に負担がかかるから、3日に1度に増やすかもしれない。」
「・・・」
「薬のタイミングも・・」
そこまで聞いたところで顔を覆って泣き始めた母に、隆文が言葉をとめる。

そっと母の背中に手を乗せながら、唇をかみしめる。

無邪気な顔をして眠っているみわ。

どれだけ努力をしても、どれだけ知識を身に着けても、結局父を奪った病に勝てない。
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